「もしかして認知症?」と思ったら
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Tomoko Sugiyama
杉山 智子
順天堂大学大学院
医療看護学研究科
高齢者看護学准教授
2005年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修了、博士(保健学)。2007年順天堂大学医療看護学部講師。2012年、同准教授。高齢者看護、認知症看護などを主な研究分野とする。
- 記事掲載時の情報です。
高齢者が集まる活動の場では、「もしかして認知症?」と思う場面に出くわすことも珍しくはありません。
そんなとき、周囲の人はどのように関わればよいのでしょうか。
高齢者看護の中でも認知症ケアがご専門の順天堂大学大学院
医療看護学研究科准教授・杉山智子先生に、認知症に気づくきっかけや関わり方について伺いました。
何よりも、その人に関心を持つことから認知症のケアは始まります
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気づくきっかけはいつもと違う少しの変化
認知症は普段接しているご家族が気づくことが多いです。基本的な排泄、食事などの「日常生活動作(ADL)」よりも先に、買い物や銀行の手続き、交通機関を使う外出といった日常生活を送るための応用的な動作である「手段的日常生活動作(IADL)」から困難になっていきます。
また、地域の集まりなどに参加していても、周りと同じように行動ができなくなったり、約束を忘れたりと、他者と接する機会や役割がある活動の中で、ご家族以外の人から「もしかして認知症かな?」と気づかれることもあります。きっかけとなるのは、いつもと違う少しの〝変化〞かもしれませんので、周りが意識していないと見過ごしてしまいがちです。 -
認知症かな?と気づいたらどう関わるか
変化に気づいたら、まずはどういう気持ちで、どのようなことに困っているのかを知ることが重要です。初めから認知症と決めつけてはいけません。その変化が老化による可能性もあります。認知症イコール物忘れではないですし、決して何もわからなくなるわけではありません。地域の活動においても何もさせないのではなく別の役割を誰かと一緒に行うなど、ご本人の思いやプライドを傷つけず、その人らしさを保つものを失わないように配慮しながら見守りをしていくのがよいと思います。
ご本人も「なんとなくうまくいかない」という不安感は持っています。そんなとき、周りから追求されたりすると、より猜疑心を強くしたり、また失敗するのではないかと自信をなくしてしまったりします。不安を感じても、特に身近なご家族には自分の衰えを認めるようでもあり、なかなか伝えることができないのです。そうした葛藤を抱えていることを周囲の人が想像していただけたらと思います。※イメージ
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なぜ? どうしたいの?と聞いてみる
もう一つ大切なのは、「その人がどうしたいのか」を知ろうとすることです。認知症は、原因疾患もたくさんあり、個々に時間帯、体調、環境などによって症状が違い、一概にこうすればいいという正解はありません。だからこそ、どうしてその言動をとるのか、背景やニーズ、行動パターンなどを紐解いていくことが第一歩です。
周囲はつい行動を制限してしまいがちになりますが、「ダメ」というだけでなく「今、何がしたいのですか」「なぜそうしようとしたのですか」と、理由は直接ご本人に聞いていくことが大事です。意図や行動の意味がわかることで、そこに対応することができます。
健常な成人であっても、話を聞こうとしてくれる人は信頼できますし、何も聞かないでダメと手を引っ張られたら「自分はいいことをしようと思ったのになぜ止められるんだ」と怒りが湧いてしまうものです。認知症の人も同じですから、特別視することなく、その人の立場で考え、落ち着ける環境をつくり、丁寧に話を聞く時間を持つとよいのではないでしょうか。「その人が心地よく感じられること」を見つけられるといいと思います。※イメージ
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家族だけで悩みを抱えず相談を
ただ、ご家族だからこその関係性や思いがあり、わかっていてもなかなか簡単にはいかないこともあります。自分自身に余裕がなければ落ち着いて話を聞こうという気持ちも湧かなくなるので、一人で悩みを抱えず、誰かに相談することも大切です。他のご家族に悩みを理解してもらえない時や認知症かもしれないと思った時は、地域包括支援センターなどの支援機関に相談するとよいでしょう。
認知症は、日常に落とし込むと理解しやすくなります。不快な思いをしないように「こう言われたら自分ならうれしい」と想像して関わるということが大切です。何よりも、その人に関心を持つことから認知症のケアは始まります。今年1月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。国民一人一人が支えるのではなく、支え合いながら認知症の人とともに暮らす活力ある社会を作ることを目指します。認知症かもしれないという人が身近にいたら、関心を持ち、声をかけることから始めていただけたらと思います。※イメージ