長くなった老後をどう過ごすか?
これからの高齢者住宅選びとは
Yoshikazu Nakamura
中村 美和
医療法人社団祥和会
中村内科クリニック理事長・医学博士
1961年長崎大学医学部卒。
群馬大学第二内科等を経て医療法人社団祥和会中村内科クリニック開設。1985年光が丘パークヴィラ開設、付属診療所開設。1994年付属ケアセンター開設。
株式会社光が丘ヘルスケア顧問。株式会社東急イーライフデザイン顧問。
- 記事掲載時の情報です。
超高齢社会が進展する中、2025年には75歳以上の後期高齢者が2180万人になると推計されています(厚生労働省)。
1985年にいち早く、自立期から看取り期まで対応する高齢者住宅の先駆け「光が丘パークヴィラ」を開設し、
数多くのご高齢者と共に過ごし、見送ってきた経験を持つ内科医の中村美和先生にお話を伺いました。
元気なときから看取りまで
高齢者住宅は柔軟に変化していかなければなりません
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今までの生活の延長線上で
自分らしく暮らせる住宅「今までの我が家と遜色ない、いや我が家よりもっと安心安全快適に、愉しく暮らせる場所を」。そんな理想の高年者専用住宅を求めて、約35年前に「光が丘パークヴィラ」を開設しました。当時はまだ高齢者住宅というと暗いイメージが残っている時代でしたが、それを払拭するために建築や環境にこだわり、今までの生活の延長線上で愉しく自立した生活を送れる住宅を目指しました。生活の雑事から解放されて便利に暮らしながら、ご高齢者だけの囲まれた世界にはならないように、マンションと同じように外出や自分らしい自由な社会生活を営むことができる。食事も飽きずに毎日食べられる家庭の味を提供する。そうした「ホテルの機能性、マンションの気安さ、家庭の味」がキャッチフレーズです。
一方、私は医師としてたくさんの高齢の患者さんを診てきましたから、生活支援はもちろんですが、介護・看護、医療支援を連携させて組み込まなければ、老後の生活は成り立たないと強く感じていました。そこで光が丘パークヴィラには診療所とケアセンター(介護住宅)を一体化させ、健康状態の経過に応じた対応ができるようにしました。※光が丘パークヴィラ 外観
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最期までいられる場所か
見通しを持ってご高齢者の体調はいつどうなるかわからないもの。そして誰しも必ず最期を迎えます。ですから、その見通しを持ち、生活の快適さを求めながらも具合が悪くなったときにはずっとサポートできること、最期までいられる場所であることを最も重視しました。それは医師と介護スタッフ、看護スタッフが連携して一体になっているからこそできることです。
高齢者住宅を選ぶときは、最期はどうなるのか、どうケアしてくれるのか、という見通しを持って選ぶことが非常に大切です。特に、一昔前まで「具合が悪くなったら救急車で病院へ」という考えも多くありましたが、今は病院も受け入れが難しくなっている現実があります。平均在院日数は短縮傾向にあり、早期退院を迫られても行き場がなく転々とする、いわゆる「医療難民」の問題も増えてきています。そういう意味では、高齢者住宅で終末期のケアができ、看取りまでできるということが非常に重要なポイントとなるでしょう。
光が丘パークヴィラは看取り率90%以上ですが、これはご入居者・ご家族との信頼関係があってこそ実現できることだと自負しています。お元気で入居されたときから、最期に慌てないようにどうしたいかというご希望を聞き、長い間おつきあいをするなかで生活環境や性格などその人の背景をよく知り、話し合いを重ねることで、納得のいく看取りを迎えるのです。ですから一人ひとりの看取りはみんな違います。信頼関係を構築するために一生懸命に取り組んできた35年ですが、看取りに至るまでの気配り、目配り、心配りがいかに大切かを痛感しています。 -
※光が丘パークヴィラ 中庭
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長くなった老後をどう暮らすか
35年の間に、光が丘パークヴィラのご入居者の平均年齢は72歳から87歳に上がりました。長寿化して趣味嗜好も生活も変わってきていますから、高齢者住宅の在り方もそれに合わせて柔軟に変化していかなければなりません。長くなった老後をどう共に暮らしていくかが、これからの重要なテーマです。
近い将来、社会の人口減少による人手不足も予想されます。そこで、いつまでも従来と同じ形での介護・看護ではなく、光が丘パークヴィラでも中間介護フロアを新設しました。少し介護が必要になってきたが介護住宅に移るほどではないという状態の方を軽症、中等度、重症の機能別にデイルームで生活を支援する、新しい試みです。ご入居者にとっては居室に閉じこもらずに、日中を活動的に過ごしていただくきっかけにもなると思います。※光が丘パークヴィラ 居室
※家具・調度品等は備え付けられておりません -
元気なときから看取りまで
安心できる住宅選びを今は変化が激しい時代ですから、それをよく見極め、元気なときから看取りまで、高齢者住宅はさらなる進歩を目指して努力を続けていかなければなりません。最近多発する地震や水害などに耐えられる建築かどうか、防災対策やコロナウイルスなどの感染症対策がしっかりと行われているかなども重要です。
高齢者住宅を選ぶときは、いざというときでも「ここにいる方が安心」と思えるような住宅を選びたいものです。これまで述べたようなことを一つひとつチェックして、自分の優先する希望と照らし合わせてみてください。終末期の看取りまでできることもぜひ確かめていただき、愉しい暮らしばかりではなく、誰もがいつか必ず迎える最期のときも見通しを持って、総合的に安心できる高齢者住宅を選んでほしいと思います。※イメージ
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これからの高齢者住宅選びのポイント
1コンセプト
今までと遜色ない自分らしい暮らしができるか
2建築・環境
災害時も安心な建築、商業圏や文化施設などの充実、緑の多い環境、都心へのアクセスなど
3サービス
機能性、気安さ、家庭の味
生活支援、介護・看護、医療支援の一体化4将来の見通し(トータルサービス)
介護が必要になってきたらどうするか
住宅内で看取りができるかどうか5防災・感染症対策
「ここにいれば安心」と思える対策